プリビズメモ。プリビズで出来ることはもっとあるはず。
プリビズの目的
自分が思うプリビズを大作映画に取り入れる最大最高の理由は、本編撮影時に無駄な作業を発生させない為でも、予算を抑えるためでも、撮影設計を事前に把握することでもなく、「その作品に携わる全ての人達の士気を上げること」である。
士気が上がればおのずと仕事は早くなり、映像に対するアイデア提案も期待でき早い段階で追加予算獲得の説得材料にもなる。
プリビズチームの責任は意外と大きいのである。
以下今までプリビズ作業をしていて気付いたことをメモしたリスト。
1、カメラの行動範囲の明確化。空撮であればヘリの法的物理的高度限界、建物とヘリとの法的距離限界をCG内で絶対厳守するリグ、システム。
2、1をさらに正確にするためには正確な土地情報が必要。建物、ビルの高さ、道路の幅などロケーションを脚本から割り出し迅速にロケ先の3Dモデルを用意する。モデルは東京だったら確か精度の高いものが売られていたはず。
3、レンズ情報、カメラの位置、角度などのスムーズな情報共有化。プリビズ動画の文字から自動的に表計算ソフトなどに落とし込めると理想なんだけど、そういうものはあるのか??いやそもそも 3D ソフト上で全てHUD表示させるべきものなのかも。HUDの詳細は後述。
4、プリビズの動画上に出て欲しい情報(HUD)は以下のとおりである。
担当者名
ショットナンバー
ショットバージョン(シーンデータナンバーと同期)
作成日付
カメラレンズ
カット尺
フレームナンバー
カメラ高度
カメラ角度(THR)
カメラ速度(mph,kph?)
5、現実世界のカメラのレンズは決まっているものが多い。19.74929mm のレンズなど存在しない(フルCGの作品は別)。カメラリグにあらかじめフォーマットを仕込んでおくのが理想。ただ、Mayaでオペレートしやすいように移動回転などはビュー上から行えるようにするのが必須。
6、CGソフト上では現実的なカメラの動きを心がける。カメラの速度などが画面上に出るのが理想。現場の撮影舞台で出来ないような無理な動きはしないように。
7、どうしても欲しい絵が現実の物理法則を無視しなければいけない場合、必ず画面に表記(フルCG検討、撮影方法検討など一言コメントをつける)
8、ひとつの演技場所を勝手に変えない。エフェクトやライティングなどに影響する。どうしても移動しなければならない場合は理由とメモを添える。
9、プリビズ制作の人数は無駄に増やさず一つ屋根の下で短期間で行うことが理想。2時間ものだったら10人前後で3ヶ月以内。○○○○万以上はかけたくないところ。(値段を表記するとめんどくさいことが起こる可能性があるので伏せました)
10、演出の知識、撮影機材の知識、演技指導の知識など、CGにはあまり縁のないスキルがスタッフには求められる。出来れば監督をトップとして、プリビズディレクター、アニメーター兼レイアウトアーティスト、モデラー、エフェクトアーティスト、TD、制作進行は腕利きを揃えていたい。ここは少数精鋭で固めるべきところ。下記にそれぞれの撮影現場での役割を記す。
プリビズディレクター(1名)
本編監督の演出意図を理解分析できる人。演出。作品全体のシーン、演者、ロケ地を把握。
アニメーター兼レイアウトアーティスト(2名)
カメラマン、演技指導、役者、演出家。簡単なリグも組める
モデラー(3名)
作品に登場する全てのプロップ、背景を把握。
大量にあるモデルを管理するのは無理なので外注先含めての
モデリングディレクター。
エフェクトアーティスト(2名)
作中のエフェクトをプリビズレベルで作れる人。本編VFXSupとの連携も必要。
制作進行(2名。内1名は補佐)
絶対必須。全てのプリビズシーン、ショットを管理し
後工程のチームとも連携を取れるひと。ほんとは3名が理想。
TD(1名)
プログラムが書ける、アーティスト寄りの思考に近い人がいい。
作品の規模によって人数が増えるのは好ましいが、それによる情報伝達の遅延・誤解などが生まれる場合があるので注意が必要。
11、最も重要だといえるがせっかく上記のルールを守った上で精度の高いプリビズが出来ても現場に伝わらなければまったく意味が無いし予算をドブに捨てるようなもの。プリビズチームとシューティングチームの円滑な関係が必須である。
12、プリビズ作成時のルールは徹底することが必須だが所詮人間がやることなのでなるべく自動化を取り入れること。ショットナンバー、シーンデータ、カメラ命名規則、101f スタート、などなど。
13、プリビズを作成するCGソフトとポスプロ作業と共通してるほうが好ましいが、難しい場合はルール決めを徹底すること。それでもルールを守らない外注先が出てくる場合はもちろんあるので根気強く注意をすること。大体1ヶ月ほどでルールを守るようになってくる。
最後に。日本でのプリビズ文化はまだ生まれてもいない状態に等しい(と思ってます)。現場の人達には疎まれることもあるし、もしかしたら怒りをぶつけられることもあるかもしれない。ただただ「作品」そのもののためにくじけず仕事を全うすること。
熊本周平