または私は如何にして HUD がプリビズのカギとなりえると気づいたか
株式会社BIGFOOT代表の熊本です。この度は HUD custom tools への反響、誠にありがとうございます。HUD custom tools のDLと記事はこちらです。
手前みそではありますが、プリビズでのHUDの重要性についての記事を書かせて頂きます。
目次
①一番最初に聞くのはカメラの種類
②何故カメラ速度を知る必要があるのか
③何故高さ、広さを知る必要があるか
④何故物体の速度を知る必要があるか
①一番最初に聞くのはカメラの種類
プリビズの仕事が来たとしましょう。自分の場合は必ず聞くことは「カメラは何を使用される予定ですか?」です。何故かというと、カメラのレンズは aperture size (センサーサイズ)でかなり違ってしまいます。
例えば、同じレンズ 35mm でも、
ARRI AMIRA の2.8K(2880×1620)のアパチャーサイズ 0.935 in x 0.526 in
ARRI ALEXA Mini のアパチャーサイズ 1.112 in x 0.715 in
比較
これだけ違うと、せっかくプリビズが決まって撮影が進んでも、「あれ?なんか違くね?」てことが現場で起こり、余計な時間(お金)が発生してしまいます。これを出来るだけ防ぐのもプリビズの役目です。
カメラについてもっと詳しく知りたい方は、k.naoki さんのこの記事が基礎として良くまとめられています。
また、「カメラ名 aperture」とかで検索すればカメラのアパチャサイズは割とすぐわかります。
②何故カメラ速度を知る必要があるのか HUD: Cam Vel
CG空間は全てが自由です。空気もなければ重力もない。秒速100万キロも余裕です。でも現実世界はそうもいきません。
実写の現場に行ったらクレーンやドリー、レールなどの機材を目にすることがあるかと思います。これらは人力で動かしています。つまり、限界速度があります。こちらの特機機材のリストに書かれている、Max. Speed などがそれにあたります。
カメラ速度を知れば、速く動きすぎてたらここは早回しにしようなど、事前対策が組めます。また、事前に特機の組み方やチョイスも出来ることになり、非常に時間の節約ができます。今はドローンなどもありますし、カメラ速度が撮影前に可視化されることは非常に重要となってきます。
③何故高さ、広さを知る必要があるか HUD: Height
これはスタジオ撮影や特機の限界高度が関係してくる話です。スタジオ撮影時、あたりまえですが天井があります。ということは、限界高度があります。
といっても、ほんとの限界高度より半分ほど低く見積もっていたほうが経験上うまく事が進みます。特機の限界高度もありますし。そういった理由から、カメラの高度を知ることもまた、プリビズでは重要になってきます。同様に、スタジオの広さ(セットや撮影可能範囲)、ロケ地の候補があればその情報も事前に入手しておくと、プリビズ制作はさらに精度を増し時間の節約になります。
④何故物体の速度を知る必要があるか HUD: Velocity Node
例えば車の速度とか、シン・ゴジラの第二形態のような生物の時速など、ありとあらゆる物体の速度を知ることは演出やエフェクト班などへのケアが出来、意外と重宝したりします。あとまあ単純に面白いです。
現場によっては1シーンに複数台カメラを置くことも、フルCG作品であれば何百とカメラを置くこともあります。そうするとデータ管理も難しくなっては来るのですが、そこでシーン名とカメラ名を表示させておけば管理もしやすくはなってくると思います。
どこから、どれくらいのものを、どんなアングルで撮っているのか。を数値化出来るHUD、意外と、ほんとに大事なのです。
さて、ここまで正確さや実写でのルールを書き連ねてきましたが、そのすべてを知ったうえでそれらのルールを破り、好き勝手やりましょう。凡庸な映像に人は魅かれません。プリビズは「撮影検証映像」であると同時に、「作品がどうすれば面白くなるか」を検証できる場でもあります。しかも、撮影が始まり大きなお金と人数と時間がかかってしまう前にこれが出来てしまう!素晴らしいパートです。
今回は以上となります。また気が向けば何か書くかとは思います。
それでは皆様、楽しいプリビズライフを!
熊本