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アニメータードラフト会議に挑戦する学生・ジュニアの方たちへ

どうも株式会社BIGFOOT代表の熊本と申します。

今回の記事を書こうと思ったのはアニメータードラフト会議の課題がプリビズの有用さをお伝えするにちょうど良かったので(運営の皆様すみません)、乗っかる形で大変恐縮なのですが書かせて頂きました。今回の記事は大きく分けて2つの項目に分けて書いていきます。

①アニメータードラフト会議に関して思うこと
②長尺のアニメーションをクオリティ高く仕上げる方法

プリビズの有用さのみ知りたい方は②から読まれることをオススメします。

①アニメータードラフト会議に関して思うこと

最初に断っておきますが、僕はこのイベントをまだ未発掘の才能ある若人が気軽に参加できる、大変素晴らしいものだと思っています。まず、アニメータードラフト会議とは何ぞや?というかたに。こちらのサイトで確認が出来ます。

第一回目
http://www.too.com/atsuc/2015/draft.html
第二回目
http://www.too.com/atsuc/2016/draft.html
第三回目
http://www.too.com/atsuc/2017/draft.html

第一回目から第三回目までの要項を見て、プロの現場で働いている皆様には「ん!?」と思った方も多いかと思いますが、年々難易度が倍増しています。第一回の15秒以内、キャラ1人に対し、今年なんて45秒以内、キャラ二人です。この物量は、アニメーター個人の技量を測るのには少々長いのです。

プロのアニメーターは大体2,3秒のアニメーションを見れば制作者の技量は分かってしまいます。10秒もあれば制作者の動きに対する意識、知識、技量、はたまたレイアウト能力、編集能力までわかります。逆を言うと、それ以上はほぼ見ません。初めの2,3秒で判断して見るのをやめる人もいます。学生の方にはシビアかもしれませんがこれが現実です。

話を今年のドラフト会議に戻します。45秒以内というのは本来10余秒で十分判断できるものを、余計に35秒も作らせてしまうことになります。それはつまり、コストの無駄使いになってしまうのです。本来なら100%の能力を見せれるはずが、尺が長い為に50%まで落とさざるをえない、ということもありえます。(ちなみに制作期間は第一回目からほぼほぼ変わってないようです)

もしかしたらドラフト会議への参加者が増えてしまった為、ふるいにかけるために難易度を上げていったのかもしれません。が、それは今人材が枯渇しているこの日本で、本当に必要なことでしょうか?

でもまあ、今回決まってしまったものはしょうがないので、それでも45秒に取り掛かろうとする勇敢な学生、ジュニアの方々に、長尺作品をクオリティ高く上げる方法の一つを次に書きます。

②長尺のアニメーションをクオリティ高く仕上げる方法

学生とやりとりしていると、大作を作ろうとして途中で断念してしまう、という人が多く見受けられました(まあ僕もそうでしたが)。

問題は全体像が見えないから、つまり終わりが見えなく、モチベーションが保てないからにつきます。ではどうするか?早期に全体像が見えるようにすればいいのです。そう、みんな大好きプリビズです。

プリビズとは?ここで説明するのはめんどいので各自ググって下さい。

ドラフト会議第三回目の課題のプリビズを作ってみました。制作時間を計ってみたら1時間半ほどでした。休憩も入れたら2時間でしょうか。

いかがでしょうか?コンテのみでは分からなかった全体像が見えてきませんか?

そして、あそこはこうしたいな、あそこに力を入れよう、ここに簡単なエフェクト入れてみよう、ここのキックは派手にしてみたいな、ここは走りのループで行けるな・・・などなど、妄想が膨らみませんか?ワクワクしてきませんか?このワクワク、妄想こそがプリビズ制作の最も大きい目的だと自分は思っています。そして、全体像が見えることによりモチベーションが保てます!

そしてそして、モチベーションが保てる、やる気が出る、というのは、クオリティアップにも繋がるのです。45秒が怖くなくなります(このプリビズは34秒ですが)。

最初の1ショットをゴリゴリに作り始め、あとに行くにつれ時間が足りなくなる、という学生を多く見てきました。そうではなく、たかだか数時間で全体像が分かるプリビズを作り、残り数百時間をただただクオリティアップに集中したほうが、作品をクオリティ高く作りきる道につながりやすいのです。

でも、何でボックス?フリーリグでやればいいじゃん、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、学校の環境によってはフリーリグがリアルタイムで動かないスペックのPCのところもあるのです。あくまで今回のプリビズのコンセプトは「全体像を短時間で知る」こと。リアルタイムでアニメーションの肝であるタイミングを知れることは何より大事なんです。ですので、必ずリアルタイムで動く最低限のポリゴンで全体像をいち早く(面白く)なるように仕上げられるように注意しました。

今回、playblast は最後の一回のみで、作業中は一度も playblast してません。リアルタイムでタイミングを確認できるのはアニメーターにとって重要なのです。

さて、今回の記事は以上です。長々とお付き合い頂きありがとうございました。少しでもアニメータードラフト会議に挑戦する皆さんのお力添えが出来ると幸いです。すばらしい才能が見れるのを楽しみにしております。

アニメータードラフト会議第四回目は尺・難易度共に第一回目に戻ることを期待して。
熊本